2008年12月7日日曜日

羽黒修験の街並み-山形県鶴岡市③

鶴岡で私の最もお気に入りの街並みは、旧羽黒町手向の宿坊街です。出羽三山神社にいたる羽黒山の麓の緩やかな坂道に、30軒あまりの宿坊が立ち並んでいます。宿坊1軒1軒の建物の形や庭の結構はさまざまですが、全体として調和の取れた実に気持ちの良い街並みです。
 
江戸時代までの神仏習合の伝統のせいか、建物は神社風ありお寺風ありで、いずれも堂々たる構えです。広い敷地の庭造りもそれぞれに個性的で、とりわけ新緑の季節、白やピンクの花々が一斉に咲き始める頃の宿坊街の風情は殊のほか匂いやかで、まちなかの景観としては、第一級のものです。
 
今まで外から眺めてばかりでしたが、過日、実際に宿坊を訪れ、羽黒の宿坊の現状について話を伺う機会がありました。それぞれの宿坊には、担当地域があって、信徒が講を組んで出羽三山神社に参拝する時の宿坊は予め決まっています。宿坊を運営する祝部(はふり。宮司の指揮下で神事を行なったり、参拝者の世話をする人)は、毎年暮から旧正月にかけて、神札や作占いを持って、担当地域の檀家1軒1軒を丁寧に廻るそうです。
 
しかし、信徒の離農や高齢化の影響がここにも現れ、参拝する講中の人たちは年々目に見えて減っているそうです。今や宿坊専業で一家の生計を支えることが困難になり、多くの祝部が公務員として勤めたりしながら、”兼業”で支えているのが実態とか。この時代、信徒を増やすことは決してたやすいことではないでしょうが、山岳信仰の原点に立ち帰って、山を中心とした自然の摂理を学ぶ場として、子供達の林間学校やシニア向けの鍛錬教室に開放する方法などは考えられないものでしょうか?
 

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