2008年12月7日日曜日

宮古島の野辺の送り-宮古島その3


宮古島の博物館に、その昔野辺の送りに使っていた輿が展示されていました。「龕」(ガン)と言います。どの村でも、共同の「龕屋」(ガンヤー)に大切に保管されていて、葬儀の時には皆が協力して、弔いの葬列を組み、お墓まで棺を運んだそうです。展示されていたのは士族用のもので、立派な装飾を施した鮮やかな朱塗りの輿です。一般人のものは、松材を使った素朴で重いものであった、と説明書きにありました。
  
葬儀は人生の通過儀礼の中で最も大事なもののひとつですが、今や、地縁社会の衰退に伴い、都市部ではプロの葬儀会館が殷賑を極めています。便利な立地、こぎれいな施設、手慣れた段取り・・・その限りでは文句の付けようもないし、現実に他の選択も少ないのですが、円滑に進みすぎる味気なさを感じますね。青々とした明るい海を見晴かすサトウキビ畑の中を、赤い龕がゆるゆると進む様を想像すると、なおさらそう思います。

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