2008年12月7日日曜日

智頭の石谷家のこと

智頭のまちなか観光の目玉のひとつに、石谷家がある。石谷家は、藩政時代から大庄屋の役割を担ってきたこの辺り屈指の素封家である。これまで、酒田の本間家など、地方の豪商・豪農の屋敷の数々を見てきたが、この石谷家は、その規模と趣味のよさで、群を抜いている。

現在の屋敷は、大正時代に建てられたもので、既に80年の歴史があるが、建物のメンテナンスは完璧。様式は古いのに、新しささえ感じる。それもそのはず、この屋敷は全館が開陳されているのではなく、家人は今も、仕切り塀の奥向こうに住んでおられるらしい。この手の屋敷は、いったん博物館になってしまうと、歴史の重みは感じ取れても、人の気配と生活の匂いは、日々薄れてしまう。その点でも、この屋敷は少し、特殊かもしれない。

客用の表玄関は比較的簡素であるが、この家の勝手口の広さには、驚いた。間口は通常の2倍以上、土間の面積は優に4倍以上。一体何人の人たちが、ここで立ち働いていたのだろうか。台所の大きさからして、大谷家の家勢が並み外れたものであったことが想像できる。

座敷は、書院造あり、江戸座敷風ありで、変化に富み、その数約40。珍品、名品の家具調度類もいっぱいあるのだろうけれど、仰々しい展示は一切ない。「何でも鑑定団」で、全館鑑定をしてもらうと、面白い話がぼろぼろ出てくるかも。

智頭駅から歩いて10分もかからないこの辺りには、古い町並みが、かたまって残っている。智頭急行線や因美線で鳥取方面に抜ける人には、途中下車をお薦めします。
 

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