2008年12月7日日曜日

鳥取智頭の杉尽くし

鳥取県八頭郡智頭町は杉づくしの街だ。駅前の小さな商店街を辿ると、たいていの家が小さな杉玉を軒先に下げている。昔の屋号や、商売なども表示してあって、中々親しみが持てる。杉玉は、造り酒屋が新酒ができたお知らせ用に吊り下げるものと思っていたが、智頭では、どの家も軒下に飾るのが、昔からのしきたりと言う。

杉玉工房で聞いたら、夏の杉の葉はやにが出るので、彼岸過ぎになって初めて、杉玉制作に取り掛かるそうだ。普通の家庭が吊り下げるものは、直径30センチ以下で、3500円位とのこと。
「それで、一個作るのに、どの位かかるんですか?」
「ほぼ一日かね~。」
「じゃ、お父さんの日当としては、ちょっと物足りないね」
「商売っ気を出して高くすると、皆買ってくれなくなるからね。まちおこしだと割り切らないと・・・」
大きいものは万円単位。工房の軒先にに吊り下げられたものは、片手では全く持ち上がらないほど重い。

杉材で作った梟の彫り物も、智頭自慢の工芸品。目の周りの輪は、自然の木目を浮かび上がらせたもので、描いたものではない。 これが職人さんの腕の見せ所。

杉材で作られた公衆トイレ。杉材を薄く切って、ブラインドのようにはめ込んであるので、明り取りと通気孔の両方の機能を果たして、気持ちがいい。

駅前まで戻ってくると、親父さんと娘さん(ひょっとして孫娘?)のコンビでやっている小さな喫茶店があって、自家製のパンも焼いている。この店(夢屋)の椅子が、また尋常ではない。杉の根株を台座にした木組みの椅子だが、見た目と違って、実にすわり心地がいい。しかし、その重さは、想像を絶する。大の男でも、片手での持ち上げは到底無理、か細い女の腕では、両手でも多分持ち上がらない。
「床掃除のとき、どうしてるんですか?」
「うん、ま~、かなりつらいね。」

今、杉の生産は、経営的には非常に厳しいそうだ。後継者の確保も含めて、智頭の苦闘は続く。

 

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