2008年12月7日日曜日

くりもとミレニアムシティのこと

千葉栗源にあるこのエコビレッジは、全体がすっぽりガラスで覆われています。真夏の太陽熱をさえぎるために、建物の周囲には欅(けやき)と柳が植えられています。欅は今はまだ、大木と言えない大きさですが、数十年先には深い木陰を作ることでしょう。仙台の定禅寺通りには、欅の大木が4連に立ち並び、真夏でもひんやりした緑陰を作っていますが、あれと同じ発想ですね。天井に開閉部分があるので、風を入れれば、冷房不要という仕掛けです。ガラス越しに木々の緑が映えるので、中にいて実に気持ちがいい。実際に現場を訪れての実感です。

欅は完全に落葉するので、冬場、太陽熱だけでかなり温かいことは、容易に想像がつきます。代表者のOさんの話では、暖房機器としては、農業用のボイラーが設えてあるだけなので、それでも寒いときは電気炬燵に入るのが一番、とか。

大きな温室のような建物の中に、昔のパプア・ニューギニアの写真で見たような、高床式の小さなコテージが立ち並んでいます。大きさは畳2畳ぐらいしかないので、大の男が二人寝たりすると、ちょっとむさくるしい感じ。画像の左側から2番目のコテージの屋根は、木々が交互に差し込んだような形になっていますが、ここは屋根が開閉式になっています。ある学生さんが作ったそうで、「星を眺めながら寝る」のに丁度よいらしい。

このコテージの下がリビングになっています。ソファーが置いてあったり、ハンモックを吊り下げたり、手作りの行灯一つだけとか、皆さんの思い思いのプライベート空間です。プライベートといっても、他人の目をさえぎる構造にはなっていないし、そこに置いてある物は、他人が使っても文句を言わないルールになっているらしいので、半ばパブリックですね。因みに、厨房のある棟を除いて、地面はコンクリートなどを打っていない単なる土間なので、あちこちに雑草が生えていたり、ハーブの植え込みがあったりします。

小学生ですら個室を持って、お城に仕立て上げるのが現代の風潮ですが、それに逆らって、”プライベート”を「方丈記」の作者も畏れ入るような質素な空間に押し込めたのは、今時珍しい発想です。自然の力の活用と人のつながりを重視したミレニアムシティらしい設計です。
 
 

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